テクニカルレポート

PUR製本について

2011年7月15日

PURとはPoly Urethane Reactive(反応性ポリウレタン接着剤)の略称で、従来型接着剤であるEVA系ホットメルトより丈夫で開き易く、環境にも対応した糊の使用ということで注目も広がりつつあります。7年前くらいからヨーロッパを中心に普及しつつあるPUR製本。平成21年5月現在でPUR製本ラインが大手製本会社を中心に全国で約40機導入されているそうです。上製本の図鑑などもPUR製本に変化し始めているそうです。そこでPUR製本とはどういうものなのか説明したいと思います。

※EVA系ホットメルトのEVAとは、Ethylene Vinyl Acetate(エチレン酢酸ビニール樹脂)の略称

PURのメリット!

①よく開く
(柔軟性+強度)
背に付く糊の塗布量が従来型1㎜に対してPURは0.2~0.5㎜、またPURの伸張率が1200%あるためよく開くことが実現。
②丈夫で熱に強い
(耐熱性+耐寒性)
耐熱温度帯に関して従来型は0~45℃、PURは-30℃~100℃で温度変化に非常に強い。
③環境にやさしい 糊の溶解温度に関して従来型は180℃前後、PURは120℃前後で溶解時のエネルギー消費量が少なくて済む。また、PURはリサイクル時の障害になる紙と糊の分離に関しては容易であり、接着剤の破片も100%除去でき、古紙リサイクル適正ランクはAランクの評価。
印刷物資材「古紙リサイクル適正ランクリスト
大分類小分類印刷物資材古紙リサイクル適正ランク
ABCD
③加工資材製本加工製本用針金、ホッチキス等
③加工資材製本加工製本用意図
③加工資材製本加工EVA系ホットメルト
③加工資材製本加工難細裂化EVA系ホットメルト
③加工資材製本加工PUR系ホットメルト
③加工資材製本加工水溶性のり

Aランク:紙、板紙へのリサイクルにおいて阻害にならないもの
Bランク:紙へのリサイクルには阻害となるが、板紙へのリサイクルでは阻害にならないもの

④インキによって劣化しない 従来型はインキ溶剤との相性が悪く、本のノド部分にかかるインキは40℃になるとインキと糊で科学反応が発生し劣化の原因になります。PURは科学反応がなく劣化しない接着剤といわれています。

PURのデメリット!

  • 原料コストが高い。需要もまだ低いのでコストが安定しない。機械導入コストもかかる!
  • 作業性が難しい。糊が固まるのに時間がかかり、取り扱いも注意しないと背の部分で品質に影響出やすい。

今後の展望

現在、当社ではPUR製本ができる設備はありませんが将来普及がさらに進んでくれば必要となってくるでしょう。現状ではコストの問題、設備の問題、仕事量問題など課題もたくさんあるのも事実で大手製本会社以外では対応が難しいと言えます。しかし、時代の変化に対応するため業界の変化には常にアンテナを張り続けていきたいと思います。